『初恋』
著者:中原 みすず
出版社:リトルモア
2002 2
170P程
カテゴリ:ノンフィクション私小説のような青春小説
おすすめ度:10点中9点
「私は3億円事件の実行犯だと思う」
という文からはじまる記憶を辿る私小説のようなストーリー。
以下ネタバレ。
幼い頃から家族の愛に恵まれず、居場所がなかった主人公みすずは
高校生の時に、ふとしたきっかけで新宿の若者や不良のたまり場、ジャズ喫茶Bで仲間に出会い
そこに居場所を見つけ青春時代を過ごす。
そんな時が2年程経った頃
仲間の1人、東大生の岸から3億円事件の実行犯になることをもちかけられる。
岸は一見冷めた性格だが、大物政治家(?)の父に対する反発心から計画を立てたのだ。(母はその愛人)
現金輸送車のルートの確認や1~2ヵ月の走行ルートの予行練習を経て
1968年12月10日雷雨の中、決行、成功。
3億円は岸の父に書籍として本郷郵便局から郵便で送ったとある。
しかし
それは当時のみすずにとって
いつの間にか想いを寄せるようになった岸との初恋の物語の1ページの出来事だった。
岸もまた、いつしかみすずに想いをよせるようになっていたが
2年で帰ってくると言い海外へ放浪、最後に会った日の言葉「LIVE・IN・LOVE」
しかし1976年インドからの手紙を最後に岸からの連絡は途絶える・・・
振り返る その背の繊く 焼きついて 夏の星座に 君のこえ
3億円事件のことへの興味も合わせて、当時の空気が香る
興味深くせつなく純粋な物語でした。
みすずは今でも心の何処かで帰らない岸を想っているのだろう
今のみすずに青春時代のBのような居場所や仲間はいるのだろうか、と。
*実行犯は岸(緑の車)、バイク屋の小父さん(青い車)、みすず(白い車)、白い車を移動させたあと1人?(亮?)とある
以下真偽に関する感想
私はこの物語がほぼ実話の可能性は結構高いのではと感じました。
・予行練習や実際の描写があまりに生々しいこと。
登場人物や場所がほぼ全部実在して辻褄が合うこと。
事実から逆算して考えてもこうはいかないのではないか?
著者は母方はヨーロッパの血が半分とあるのでクウォーター、
一般的な女性より体格も良かった描写もあるので白バイで男性と思われる可能性はある。
・出版の経緯
ネットで発見した情報が本当ならば、
1971年頃から都内(本郷?)で経営していたスナック?バー?(2001年閉店、名前はリヴインラブ?)で
男性K氏に私的な記録としてつけていたワープロの記録(未完成)を盗作されて発表された上(『真犯人』)
その内容が滅茶苦茶だったため、仲間の名誉のために真実を書こうと思った。
でなければ発表する気はなかった。
それが『幻想の手記 褐色のブルース』であり、加筆修正したのが本作『初恋』
(褐色のブルースの前に、100部自費出版した『記憶のカルテ 権力への挑戦~こうして完全犯罪は終わった』がある)
(『真犯人』を読んで著者が怒ったのも無理はないと思う。なんでこんな本が徳間書店から出版されたのだろうか?
1つだけ本当ならば興味深いのは『記憶のカルテ』には学生だった頃と、当時1996頃?の著者の写真が貼ってあったということ)
また、事件関係の本で比較的に警察の捜査の流れ等がわかりやすくまとめられた
一橋文哉の『三億円事件』(1999年7月)より『記憶のカルテ』(1996年)の方がずっと早い
・ネットで拾った情報等も合わせて考えると
ジャズ喫茶B=ジャズ・ヴィレッジ
亮=佐賀県出身の一力○○氏 *著者の実の兄かは不明
芥川賞をとったタケシ=中上健次氏
風月堂=風月堂
亮とみすずの父は名家の長男でみすずが小さいころに亡くなった=一力氏の地元は佐賀県唐津市
みすずの叔父は大学の学部長=(?)
みすずと亮は早稲田大学(亮は中退、みすずは卒業したか不明)=(?)
岸=日本政府大物の隠し子説?当時一部で顔が広かった韓国人説?
共犯の1人は岸の知人バイク屋の小父さん=(?)
輸送車を乗り捨てた場所で、岸は緑の車、小父さんは青の車、
みすずは偽白バイに乗った場所で乗り捨てたはずの白の車で逃走=(?)
*2006年に宮崎あおいさん主演で映画化