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書評感想5 『童話物語』 向山 貴彦 ファンタジー小説の傑作

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『童話物語』

著者:向山 貴彦 絵:宮山 香里
出版社:幻冬舎
1999.3
545P程

カテゴリ:ファンタジー小説
オススメ度:10点中10


この作品、学生の頃に読んで「面白い!」と思い
社会人になってからkindleで読み返し、前ほどではないですが
良いなと思った作品です。
ファンタジー小説の傑作で面白感動。

主人公のペチカは余裕のなさもあり他者を思いやることもできない感動もないただ生き延びるための毎日を過ごす。そして孤独。支えは遠い日の暖かい母の写真1枚。そんな中、妖精フィツとの出会いをきっかけに少女は徐々に変わっていく。

最初は不幸の連続で可哀想になってきますが、それでもなんとか生き延び、優しいおばあさんとの出会い、心優しいオルレアとハーティーとの出会い。

最初は小憎たらしかったルージャンもどこでそうなったかは不明なものの何故か応援したくなるような青年に変化し、2人の成長物語とも言え、人間の持つ汚さや素晴らしさが描かれます。
物語中盤、オルレアに母以来のぬくもりを感じて今までのことを打ち明けるシーンと、終盤許せなかったルージャンの誠意に触れ地面の割れ目から間一髪助かるシーンで泣きました。
ヤヤの「誰だって自分が思っているよりすごい人間だよ」も印象的。

永遠の生を持つ妖精と短命の人間の対比、終盤フィツ自身が言った「変われることの素晴らしさ」も1つのテーマなのでしょうか。そして誰もがアンティアーロ・アンティラーゼ「旅の途中」

物語終盤は瞬間移動してきたとしか思えない守頭など謎も多いですが大した問題ではなく、他者のために命を投げ出すことが美徳とされる(と私が思っているだけかも)日本人が書いたに間違いない心打つ作品。生きることの困難と素晴らしさ。読後にはちょっとした感動と前向きな気持ちが残ります。

3つの天(太陽、月、星)、天空に高くそびえる塔はバベルの塔を彷彿とさせ、最初の人間は妖精が元という設定。時間をプレ、レプといったオリジナル用語で表し、要所にマップや人物の絵が挿入されることで想像力を補助し、人物への思い入れを深くしていて、設定が凝っています。

読むのに凄く時間がかかりましたが
こんな本を書ける人がいて、こんな感動の伝え方もあるのだなと。
感銘を受けた作品です。
ファンタジー小説好きな方に、特にお勧めです。

 

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