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書評感想20 『死の淵を見た男 吉田昌朗と福島第一原発』門田隆将 最前線で戦った人たちの記録

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書評感想20 『死の淵を見た男 吉田昌朗と福島第一原発』
映画『Fukushima50』原作

著者:門田 隆将
出版:PHP研究所(文庫版は角川文庫)
2012.11
380P程

カテゴリ:ノンフィクション
おすすめ度:10点中9点

 


 

2011年3月11日
午後2時46分、東日本大震災
そして、数十分後の大津波
更には福島原発での電源喪失と緊急事態宣言、避難指示、
当時のことを覚えていない人はいないでしょう。

 

そんな中
福島第一原発の最高責任者である所長の吉田昌朗氏を筆頭に
当直長だった伊沢郁夫氏や現場で奮闘したメンバーからの取材を重ねて
当時の現場の様子をリアルに伝えている本です。

極限の状況で、現場の方はどう行動していったのか?
電源喪失した3/11以降、復旧に死力を尽くした人達も
3/15午前6時過ぎには最大の危機を迎え
所長命令で免震重要棟にいた700人程の作業員も緊急避難し
一時69人の、いわば決死隊が残ることに。

当時の民主党政権・内閣総理大臣、菅直人氏の対応
自衛隊、消防、協力企業etc
ぎりぎりの状況の中、現場がどのような対処をしていったのかが伝わる本です。
人間ドラマは涙なしには読めない部分も。

著者あとがきにあるように
最悪の事態に放り込まれた時に日本人が発揮する土壇場の「底力と信念」を
感じます。
自分の命を懸けてでも、誰かのために、何かのために力を尽くすという日本的な美徳。

 

感想:
今が2020年2月なので、あれから9年「しか」経っていないのかとも感じます。
読むまで、はるか昔のことのようにも思っていましたが。
私たち家族は東京にいたので、直接的に大きな被害を受けたわけではないですが
株で大損したような気もしますが、そんなことは些細なことで
3/12に福島第一原発1号機建屋が爆発
3/14に3号機建屋が爆発
3/15に4号機建屋が爆発
これから日本はどうなってしまうんだろう?
東京も住めなくなってしまうかもしれない・・・と大きな不安を抱いたことを覚えています。
そしてマスコミや政府の報道が当てにならないと感じてネットで情報収集し
(実際当てにならなかったわけですが)
ネット上で、どのような方なのかは詳しくわかりませんが、異常に原発に詳しい方が情報をアップしてくれていて
詳しく分析されて、前日の3/13に3/14の3号機の爆発を予見したり、世の中凄い人がいるもんだと思いました。

改めて、この書籍を読むと
現場を中心に奮闘してくれた方たちのおかげで最悪中の最悪の事態は避けることができて
東日本が、原発半径200km立ち入り禁止などの壊滅的なダメージを受けることは避けられました。


吉田氏曰く
3/15の時点で福島第一原発2号機の格納容器が爆発していたら
他の福島第一の1号機~6号機に加えて
福島第二の1号機~4号機も加えて10機が制御不能になり
単純にチェルノブイリの10倍の被害が出ると思った
それを防ぐために、最後まで部下たちが突入を繰り返してくれたこと。

原子力安全委員会委員長の班目春樹氏曰く
吉田さんの想定よりも、もっと大きくなった可能性もあると思います。
福島第一が制御できなくなれば福島第二だけでなく、茨城の東海第二発電所もアウトになったでしょう。
そうなれば、日本は三分割されたかもしれません。(西日本、汚染地域、北海道+それ以外)

当時はかなり情報を集めましたが
久しぶりに調べてみると
福島第二原発も3/15に冷温停止したものの非常に切迫した事態になっていたこと。

吉田氏も必要最低限の決死隊以外の現場メンバーに一時撤退命令を出した3/15に現場は知る由もありませんが
事後調査では
2つの奇跡が起きたと推測されています
(それによって東日本の壊滅的な放射能汚染は避けられました)
1つ目は
4号機建屋が爆発して、それと同時に何故か爆発寸前とも推測されていた2号機格納容器の圧力が下がり、2号機の格納容器爆発は避けられたこと。
2つ目は
4号機の、1500本以上もの核燃料が貯蔵されていた核燃料プールが破損せず、空焚きにもならず、偶然にも水位を保てたこと

その他にも多くの奇跡と現場の奮闘があってこその結果だと思いますが
あまりの薄氷さに
元寇の「神風」を想起します。

この「原子力発電」
制御するには
1.原子炉の停止
2.冷却
3.閉じ込める
必要があり
東日本大震災級の地震や災害があると、日本の国土に長期にわたり壊滅的な被害が出る可能性が高いことが実証されました。
さらに、原子力発電で使われた燃料は
使用済み燃料となるが、簡単に廃棄できるわけでもなく
熱を発し続けるため専用プールで何年も保存した上で
再処理し(再処理場は未だ稼働していません)
何万年単位で放射性物質を発し続ける「核のゴミ」として地中に封印することになっています。(当然、最終処分場に手をあげる場所はなく未決定のまま)

だいたい「廃炉」といっても何をもって廃炉というのかどうか。
一般住居のように更地にできるものなのでしょうか?
東京電力は
例えば、福島第二原発は2020年から44年かけて廃炉をするという計画を出したとの報道がありましたが、(つまり廃炉は2064年予定)使用済み燃料プールから1万本の燃料をとりだすのに、まず22年かかる計算だとか。
単純比較はできませんがイギリスの原発の廃炉計画は100年近いといいますし、そもそも廃炉が完了した原発例も少なく、全てが未知数なのではないでしょうか。メルトダウンした福島第一原発については、もはや廃炉期間など測定不能なのでは?(計画では2041年~2051年の間に廃炉完了とありますが)

 

書籍『官邸から見た原発事故の真実』や
『フクシマの真実と内部被爆』では
放射能汚染地域の除染に関しても
除染したところで放射性物質が都合よく消滅するわけではなく
放射性物質自体は減らないので放射性物質が
A地点からB地点に移動するだけな上
膨大な費用と作業量が必要になると述べられています。(それでも人が安心して住むためには必要だと思われますが)

よく原発は発電コストが安い、みたいに言われることがあるようですが
廃炉の試算に、放射性廃棄物の最終処分費用など本当に入っているのか?
最終処分場の保持管理費や人件費は入っているのか?
国土が超長期にわたり壊滅的被害を受けるリスクは検討されているのか?
ど~も、廃炉費用やもろもろのリスクを考えると嘘臭さ満載です。
さらに言え「統括原価方式」という電力会社に有利な会計方式で運営されており

本来電力会社が負うべきであろう「原発賠償費用」なども
各家庭や企業の電気料金に上乗せして回収されている現状です。
50兆円は超えると推測され測定不能とも言われている廃炉費用にも超巨額の税金が投入されることはほぼ確実です。
元・東電社員で、現在は医師の方の著書『フクシマの真実と内部被爆』によると
普通は
利益=収入ー必要経費
なので、必要経費が少なくなるように努力をする。
しかし電力会社では
利益=必要経費×3%
なので、東京電力は合法的な範囲でできるだけ必要経費を増やそうとする努力をする。
とあります。
また、原発に深く関わっていたり、研究したりした人の多くは
余程勘の鈍い人以外は
原発の弱点、脆弱性と危険性を大事故の前から認識していたということが示唆されています。
参考図書↓『フクシマの真実と内部被爆』

・・・どう考えてもおかしいような?
電力会社の社員は高給でしょうし、まず責任を負うべき人達が
ぎりぎり給料を切り詰める等の企業努力はないのでしょうか。

 

原発の賠償金の備えとして3.8兆円と試算されたので
それを回収するために(1.3兆円は2011年~2019年の間に回収済み)
2020年4月から電力使用1KWhあたり0.07円
標準家庭だと1か月260KWhなので約18円分上乗せして徴収するとのことです。
*後日追記2020年10/1から原発賠償や廃炉費用が託送料金に上乗せ開始
1年間だと約216円が40年間。
なんで電力会社と国の責任であろう原発に関する余計な費用を国民が負担しないといけないのでしょう。
一歩譲って、負担は仕方なしとしても、現行の問題点を改善し、方策を示した上で実行するべきだし負担が増えること、その理由内容をマスコミや何かしらの媒体を通じて公に通達説明するべきだと思います。
国会で訳のわからない不倫だ、モリカケ問題~だか~が不正会計だと、小事でいつまでも騒ぐより、もっと重要なことを議論したり、国民に周知してほしいですね。
この原発関係や電気料金の話、真実を知ったら「それはおかしい」と怒る国民は多いのではないでしょうか。

 

話がそれましたが
こんな人間の手に負えなそうな怪物が未だ日本の各地に多数存在しています。
「プロメテウスの火」にもたとえられますが
どう考えても
リスクとリターンが合ってないのではと思います。
一時、稼働原発は0になったこともありますが
(原発を廃炉したとしても、廃炉には最低30年以上かかるようですが)
2019年8月データで
9基の原発が稼働中です。
あの大震災の時のような悪夢は2度と、起きてほしくないですね。

そして、2020年3月6日(金)
この本を原作とした
『Fukushima50』が映画化・全国ロードショー。
だいぶ気になりますね!

 

 

 

 

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